ノスタルジー賛歌・ビロード(3) gap JAPAN

1992.09.17

gapJAPAN 1992年9月号
TEXTILE CREATION
デザイン多様化への跳躍台
 戦後ファッション・ベルベットの歴史のなかで、’70年代初頭が重要な一転機になる。昭和46、7年、マーケットがミニスカートを持続するか、ロングに転換するかという難問を抱えながらヨーロッパを訪問した堀留の生地問屋セルマーの副社長永森達昌は、ロンドンのキングロードに溢れるロングスタイルに感銘を受け、ベルベットのロングドレスに賭けようと決心した。こうしてセルマーは旭化成と組んで、ベルベットに社運を託したのだが、西出はここから深くベルベットに関わるようになる。先発の揚原は、年間3千万の在庫を抱えることになるだろうと警告していたというが、それはベルベットの難しさを知っていればこその老婆心だったろう。しかしこのセルマーの挑戦は、大方の予想に反して爆発的な売上げを実現し、初年度から利益を計上した。
 セルマーのねらいは、ベルベットをタウンウェア素材として育てることにあった。ベルベットは呉服分野から立ち上がって資材分野で育ち、次第にファッションに入り込んでいったが、昔も今もフォーマルニーズが強い。しかしファッションが開花するなかに、このロマンティックな素材が、タウンに進出するチャンスが生まれるというセルマーの読みは、図星だったのである。つれてベルベットデザインは、これまでになかったような多様性を持つようになった。



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