他にない物あきらめない(繊研新聞)

2007.02.05

繊研新聞2007年2月5日
ここに技あり
リネン、ウールもベルベットに
優雅な光沢で最高級の織物として君臨するベルベット。最近は街着にも定着し、身近な雰囲気を増す傾向にある。伝統の枠に納まらず、ファッション素材として発展する間に、世界で知られ始めた名前がある。福井の山崎ビロードだ。
本物の商品開発
リネン100%のベルベット。伸度が低く、どんな織物にするのも難易度が高い麻を、山崎ビロードがベルベットとして完成させたのは昨年のことだ。足掛け3年。糸に微細な傷があり、切れやすく、織機がまともに動かない。織機の改良から、糊やオイルの品種の変更など、10センチの織物にするまで3ヶ月かかった。糸をかけてはすぐ止まる織機の前に一日中、立っていたら、どうなるか。「全部、引きちぎって、破り捨てたくなる」と、山崎昌ニ会長は苦笑する。しかし、新しい素材に取り組む時はいつも同じことの繰り返しだ。頭を冷やし、織機から離れている間に、「おっかあ(夫人)が、糸をつなぎ直してくれている」。最も身近で優秀な技術者である夫人との二人三脚で、45年近い歳月をベルベット作りに専念してきた。
リネンの前にはウールを完成させている。その前は綿だ。もともと長繊維の産地で、準備から染色まで、節のある短繊維は得意ではないが、緯糸だけを変える程度では、「本物の商品開発」にはならない。安価な中国製品などと一線を画す必要もある。ナイロンやポリエステルのマイクロファイバーなど、最先端の合繊も含めて、本場と言われるイタリアでも、まず使われていない素材への挑戦を重ねた。
賃加工が全盛の時代でも、試織に5、6台を割きながら、「他にない」物に挑んできた。オパールもリネンも、さまざまな難しい組み合わせを、染色や加工を担う技術者たちが嫌がらずに、一緒に物作りをしてくれた結果だと言う。「すべては、素晴らしい人々とのつながり」。そんな思いを強めながら、新たな草木染めに向かう。



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