ベルベットの職人・山崎昌ニ展(繊研新聞)

2000.02.12

繊研新聞 2000年2月12日
絞り、和紙、両面・・・「見たことがない」
豪華でフォーマルな高級素材、ベルベット。長い歴史に培われ、「完成」された美を持つと思われていたこの素材に、独特の感性を吹き込んで次々と新しい表情を生み出し続ける職人・山崎昌ニ氏の作品展が開催されている。
会場ではまず、ポリエステルを使って九色のタテ糸と十三色のヨコ糸で構成された「1200番」の開発をへて、90年に登場したシャンブレーベルベット「8004番」から触れていこう。カジュアルな素材としての可能性を切り開いた画期的な作品だ。ごく短いパイルであるためシャーリングがかけられず、「トラ刈り」になったことで逆に微妙な玉虫の表面効果を生み出し、絶賛されたものだ。
次に、後の「面白シリーズとして驚くような挑戦を重ねる転機となったような「プリーツと絞りビロード」。そして、少なからずデザイナーたちが評価して服作りに挑んだ「和紙ベルベット」。
展示の白眉と言えるのは、過去二、三年間取り組んできた「面白シリーズ」だ。オールレーヨンのビロード作りに道を開いた「7100番」。「袋織」はタテ糸にポリエステル、ヨコ糸に西陣織の金銀ラメを使い、袋状にしたものだ。袋織ではいろいろなものを作っているが、表面からはベルベットとは見えないのに触れると穏やかな弾性を感じ取れるぜいたくな遊びのある生地だ。「両面ビロード」も、服やインテリア素材として大きな可能性を感じる。「和紙雰囲気ビロード」はまるで和紙を漉き込んでいるような表情。「うずらちりめん」「滝の白糸」などというネーミングの生地も実際に手で触れてみたい。柿渋で染めたもの、有松絞りで表現したものなどを含め、海外からも「見たことがない」と高い評価を受けているものだ。
最近のコンテストで受賞した和紙と炭を張り付けて加工したものは、インテリア素材としても面白い。テレホンカード類にベルベットを施すことも試作しているが、これからのベルベットのはん用性に新たな地平を切り開くような試みだ。薄くかつ厳密な規格が要求されるカード類では技術的な苦労が多いが、ベルベットのステージを広げようとする山崎氏の意欲が伝わってくる。



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